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最高裁判所第二小法廷 平成7年(オ)1810号 判決 1996年10月18日

長崎県諌早市天満町一三番三三号

上告人

進栄株式会社

右代表者代表取締役

古賀康夫

右訴訟代理人弁護士

原慎一

三重県四日市市末広町二番九号

被上告人

株式会社前田鉄工所

右代表者代表取締役

前田尚久

右当事者間の名古屋高等裁判所平成二年(ネ)第六二五号損害賠償等請求事件について、同裁判所が平成七年五月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人原慎一の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係の下においては、被上告人製品の製造販売が上告人の本件特許権を侵害しないなど所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 福田博 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一)

(平成七年(オ)第一八一〇号 上告人 進栄株式会社)

上告代理人原慎一の上告理由

原判決には、以下に述べるとおり、民事訴訟法第三九四条に規定する判決に影響を及すこと明らかなる法令の違背、同法第三九五条第一項第六号に規定する理由不備があるので、破棄を免れない。

第一点 原判決の配管方式についての技術的範囲の判断は特許法第七〇条の規定に違反してなされたものであり、原判決には判決に影響を及すこと明らかな法令の違反があり、且つ理由不備の違法がある。

第一、 原判決では、イ号物件が第一発明のうちの第二項発明の技術的範囲に属さず、また、ロ号物件も第二項発明及び第二発明の技術的範囲に属さない、とする判断の理由を、

「次の1から6までのように加除、訂正するほか、原判決(第一審の津地方裁判所四日市支部判決、以下、これを単に第一審判決という。)の理由説示(原判決理由欄一から四まで)と同一であるから、これを引用する。」(原判決三十頁六~七行)として、原判決三十頁八行~四二頁二行に1~6の加除訂正事項を記述している。

しかしながら、これらによって述べられているところの、配管方式(アキュムレータの接続方法)について、イ号物件及びロ号物件と第一発明の第二項発明及び第二発明との間には本質的な相違がある、とする判断の根拠となる理由は、以下に述べるように、判決に影響を及すこと明らかなる法令(特許法第七十条)の違背があるばかりでなく、その理由自体が明らかに合理性を欠き、あるいは判断の結論と無関係の誤ったものであって、判決に実質的な理由が附されず、あるいは理由不備の違法性を有するものである。

第二、 まず、原判決の理由不備に関して具体的に説明する。

原判決が引用している第一審判決の十六枚目裏一~二行では、

「そこで、第一、第二発明の構成要件にループ式が含まれているか否かについて、検討する。」

とし、同第一審判決の十七枚目表五行~二十枚目表五行(原判決の三五頁六行~三八頁一行の3及び4項による加除訂正あり。)において、イ号物件及びロ号物件と第一発明及び第二発明との間には本質的な相違がある、とする判断の根拠となる理由について述べているが、それらの理由は次に詳述する点で不備なものである。

1. まず、原判決が引用している第一審判決の十七枚目表五~十行においては、

『第一発明では、特許請求の範囲に「ボイラとアキュムレータとを結ぶ一次側管路」、「アキュムレータとユーザーとを結ぶ二次側管路」との文言が使用されていることを併せ考えると、ボイラとユーザーとは、アキュムレータを介在して(経由して)連結されている全量吹込式の構成を前提にしていると見るのが自然であり、』と認定している。

しかしながら、全量吹込式配管であっても、あるいはループ式配管であっても、アキュムレータに蒸気を蓄え、且つアキュムレータから蒸気を放出する以上、「ボイラとアキュムレータとを結ぶ一次側管路」及び「アキュムレータとユーザーとを結ぶ二次側管路」は必然的に存在するものである。即ち、「一次側管路」及び「二次側管路」なるものは、アキュムレータにおいて全量吹込式配管に特有のものではなく、第一発明では、アキュムレータの「入口側管路」、「出口側管路」というような意味で用いられている。従って、右「ボイラとアキュムレータとを結ぶ一次側管路」及び「アキュムレータとユーザーとを結ぶ二次側管路」という文言があっても、「それは全量吹込式配管を説明しているものではなく、つまり右文言は「第一発明が全量吹込式の構成を前提にしていると見るのが自然である」と結論付ける理由となり得るものではなく、結論とは無関係である。

2. また、原判決が引用している第一審判決の十七枚目表十行~同裏八行においては、第一発明の目的が、

「ボイラからアキュムレータへの蒸気の流量を、アキュムレータにより負荷変動を吸収させながら自動的に負荷の平均値に近似した値に設定しうるように構成すること」

にあるとし、これをもって、「アキュムレータの接続は、全量吹込式を前提としていると見るのが相当である」と判断している。

しかしながら、第一発明の第二項発明は、その特許請求の範囲において、特にアキュムレータに全量吹込式配管を採用したことを明記しているわけではなく(第一審判決一六枚目裏末行~一七枚目表四行参照)、このことを念頭に置いて第一発明の明細書全体の記載から判断すれば、第一発明の目的は、特に、アキュムレータへの蒸気の流量のみについて拘泥するものではなく、「ボイラからの蒸気の流量を、アキュムレータにより負荷変動を吸収させながら自動的に負荷の平均値に近似した値に設定しうるように構成すること」にあることが明白である。

従って、右目的の記述を論拠として、第一発明におけるアキュムレータの接続が全量吹込式を前提としていると見るのが相当である、と判断することには合理性がなく、適正な理由とは言い難い。

また、原判決が引用している第一審判決の十八枚目裏十一行~第十九丁表三行において、

『本件明細書には、「アキュムレータへの」蒸気の流量を自動的に設定する旨明確に記載されている以上、本件発明が全量吹込式の構成を前提として流量制御を行うものと理解せざるを得ない。』

と述べているが、右に述べた如く、明細書全体の記載から判断すれば、本件発明(第一発明及び第二発明)が全量吹込式の構成を前提として流量制御を行うものでないことは明白である。しかも、本件明細書中では、原判決摘示のようにアキュムレータへの蒸気流量を自動的に設定することについての記載はなく、この点においても原判決の理由は不備なものである。

3. さらに、原判決が引用している第一審判決の十七枚目裏九~十行においては、「第一発明の作用効果の記載もまた、右解釈を裏付けるものと、言わなければならない。」

と記述されているが、「作用効果の記載」が具体的にどの記述を差しているのか不明であり、しかも、第一発明の作用効果の記載からいかなる理由により「アキュムレータの接続が全量吹込式を前提としている」と判断できるのかの説示も全くなされていないのである。

4. 原判決が引用している第一審判決の十七枚目裏十行~一八枚目表四行においては、第二発明に関し、

『特許請求の範囲に「ボイラからの蒸気供給管を」、「スチームアキュムレータを介して低圧ユーザーに通じる低圧蒸気管とに分岐接続し」との文言が使用されているところ、右の「介して」は、「そこを経由して」の意味と解せられ、全量吹込式の構成が第一特許権より明確である。』

との判断が示されている。

しかしながら、「介して」は、明細書全体の記載を参酌すれば、「適宜方式で接続したスチームアキュムレータを介して」と理解するのが自然であり、その「介して」を、原判決の如く、「そこを経由して」の意味に解すべき理由は存在せず、いかなる理由により、「介して」を、「そこを経由して」の意味と解すべきなのか、また いかなる理由により「全量吹込式の構成が第一特許権より明確である」のかについての記述もなく、理由不備であることは明白である。

なお、「ボイラからの蒸気供給管を」という文言は、特に全量吹込式配管の構成を示唆するものではなく、ループ式配管であっても、必然的に「ボイラからの蒸気供給管」を備えている。

5. 第一審判決の十八枚目表四~八行を訂正する原判決の三六頁二~六行においては、

『そして、本件明細書の発明の詳細な説明における従来技術、目的、作用効果の記載、とりわけ本件発明の特徴が「低圧ユーザー側に接続されたアキュムレータへの蒸気の流量を高圧ユーザーにおける負荷変動に応じてコントロールする」点にあることからすれば、性質上全量吹込式を前提としていると理解せざるをえない。』

と述べられている。

しかしながら、「低圧ユーザー側に接続されたアキュムレータへの蒸気の流量を高圧ユーザーにおける負荷変動に応じてコントロールする」ことは、アキュムレータの配管方式と全く無関係のことであり、そのことを理由に、第二発明が全量吹込式を前提としていると判断する論拠は全く存在しない。

6. 原判決が引用している第一審判決の十八枚目表九行~同裏七行においては、

『本件出願の前後にわたり全量吹込式とループ式との相違は当業者に明瞭に認識されており、しかも出願当時はループ式の法が「もっとも広く採用されている。」(乙第一号証)、「最も多く採用されている。」(乙第二号証)という利用状況であったところ、明細書にはループ式を念頭に置いた記載は全く見受けられない。』

とし、結果的に、

「本件の明細書は、ボイラ、アキュムレータ、ユーザーの管路による配管状態を規定するものであって、全量吹込式のみについて規定したものとみるのが相当である。」

と結論付けている。

しかしながら、アキュムレータに関連する発明において全量吹込式配管かループ式配管のいずれか一つを採用することが必須要件である場合はともかく、それらの配管方式の存在が特許出願前に広く認識されている状態においては、明細書に、技術的範囲に含めようと考える範囲の各種方式を念頭に置いた記載を要求されるものではない。即ち、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるものであり、特許請求の範囲の記載とは別個に、発明の詳細な説明において特許発明の技術的範囲に含ませようとする各種方式についての記述を必要とするものではない。

従って、全量吹込式配管とループ式配管並びにそれらの相違が当業者に明瞭に認識されていた状況において、明細書にループ式を念頭に置いた記載が見受けられなくても、そのことにより、本件の明細書は全量吹込式のみについて規定したもの、と結論付ける理由にはなり得ない。

7. 第一審判決の十九枚目表三~九行を訂正する原判決の三六頁六行~三七頁五行においては、全量吹込式とループ式とは当業者が容易に選択できる事項に過ぎないとする上告人主張に対し、

「全量吹込式とループ式とは、アキュムレータへの蒸気の流入機構、蒸気の発生過程、缶水温度分布、二次側蒸気の安定度、負荷変動の吸収能力、用途等が異なるものと認められるから、両者の技術特性には基本的な相違があると認めるのが相当である。」

としている。

しかしながら、技術特性に全く差異がないにも拘らず、従来から全量吹込式及びループ式と区別して存在しているわけはなく、それぞれの方式に特有の技術特性があることを前提として、それらを選択使用できるのである。負荷変動の吸収能力について記述している乙第三、第四号証中の比較表は、全量吹込式とループ式との比較のために、殊更、両者の差異を強調して述べたにすぎないものであり、しかも、同比較表中の比較内容としては、全量吹込式とループ式の特性が根本的に相違して特別のボイラーアキュムレータ・システムでなければ使用できないとか、両者の互換性を否定するような記述(このような相違こそ、原判決で言う基本的な相違に相当するものと考えられる。)は存在しない。そして、現に当業者がそれらの利害得失を考慮しながら適宜選択して使用しているのである。

原判決は、右全量吹込式とループ式との比較判断において、右比較表を参照することにより両者の技術特性には基本的な相違があるとし、結果的に、全量吹込式とループ式とは当業者が容易に選択できる事項に過ぎないとする上告人主張を排斥しているが、右比較表中に全量吹込式とループ式とを適宜選択することを否定するような「基本的な相違」があるわけではないから、右比較表の差異は、全量吹込式とループ式とは当業者が容易に選択できる事項に過ぎないとする上告人主張を排斥する理由になるものではない。

8. 原判決が引用している十九枚目表十行~同裏七行において、 『第一発明の「ボイラとユーザーとの間にスチームアキュムレータを接続し」や、第二発明の「スチームアキュムレータ介して」という文言は、管路による配管の状態をも規定する表現ではない』

という上告人主張に対し、

「本件特許請求の範囲の全体の記載をみれば、ボイラ、アキュムレータ、ユーザーとの配置関係とそれらを接続する接続管における流量弁、圧力弁の設置位置を具体的に規定するものであると認めるのが相当であり前記文言が、単にスチームアキュムレータの配置における位置関係をいうに止まるものと見ることはできない。」

と判示している。

しかしながら、右に述べてきたように、第一発明及び第二発明が全量吹込式の構成を前提としているとする原判決の理由には全く合理性がなく、あるいは理由が結論と無関係であることを考慮すれば、この判示における「特許請求の範囲の全体の記載を見れば、」の具体的な見方が根底から覆されることになり、その結論に変更が生じることは明白である。

第三、 以上に述べたところから明らかなように、配管方式(アキュムレータの接続方法)について、イ号物件及びロ号物件と第一発明の第二項発明及び第二発明との間には本質的な相違がある、とする原判決の判断の根拠となる理由は、いずれも明らかに合理性を欠き、あるいは判断の結論と無関係の誤ったものであり、結果的に、原判決は、実質的な理由が附されず、あるいは判決に影響を及す理由不備の違法がある。

第四、 特許法第七〇条は、一般に、願書に添附した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないと規定しているところ、同条の解釈としては、他の資料による補充的判断が全く許されないわけではなく、明細書中の他の項の記載はもとより、場合によっては特許出願当時の技術水準等をも考慮に入れて判断することは許されるものの、逆に、特許発明の技術的範囲を定めるに当たって、特許請求の範囲の記載から逸脱してこれに記載されていないものを発明の内容とてはならないとされていることは、多くの判例により支持されているところである。

これに対し、原判決は、第二項発明及び第二発明の技術的範囲を判断するに当たり、右第二項の2、3、5、6及び7項で指摘した点に関し、発明の詳細な説明の欄における目的、作用効果等を参酌しているが、これらを参酌した結果による配管方式の限定的解釈は、配管方式とは無関係な発明の目的、作用効果を根拠に、あるいは前述の誤った判断に基づくものであって、発明の技術的範囲を定めるに当たって到底許される範囲内にあるものではなく、正に、特許請求の範囲の記載から逸脱してこれに記載されていないものを発明の内容とするものである。

従って、右技術的範囲の判断は、特許法第七十条の規定に違背してなされたものであり、原判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背がある。

第二点 原判決における流量制御方法についての技術的範囲の判断には、次に述べる理由不備がある。

第一、 第一審判決の二十枚目表七行~同裏五行を訂正する原判決の三八頁三行~四二頁二行では、蒸気流量の制御方法に関して、イ号物件及びロ号物件と第一発明の第二項発明及び第二発明との対比判断を行うものであるが、その判断の根拠となる理由は、以下に述べるように、いずれも明らかに合理性を欠き、あるいは判断の結論と無関係の誤ったものであって、判決に実質的な理由が附されず、あるいは理由不備の違法性を有するものである。

1. 第一審判決の二十枚目表七行~同裏五行を訂正する原判決の三八頁三行~四十頁三行、特に原判決の三九頁三~五行において、蒸気流量の制御方法に関し、第二項発明では設定圧力レベルが高低の二点であるのに対し、イ号物件及びロ号物件では多段階(数段階の誤り)である点において差異がある旨を判示しているが、右二点と数段階(二段階を含む可能性がある)とは実質的に相違するものではなく、何をもって差異があるとしているのか不明である。

2. また、原判決三九頁五~末行においては、

「第二項発明では、高低の設定圧力レベル及び圧力の勾配に従って流量弁を徐々に開閉作動させ、その間流量が連続的に変動するのに対し、イ号物件及びロ号物件では、蒸気流量がある段階の設定流量に達した後は、その流量を当該段階の設定圧力の範囲内において保持し続ける(もっとも、移行の際の弁の開閉は、前記のとおり瞬間的に行われるものではない。)ものである点においても差異があるということができる。」

と述べている。

しかしながら、第二項発明でも、高低の設定圧力レベル及び圧力の勾配に従って流量弁を徐々に開閉作動させたとき、その間は流量が連続的に変動するが、その後に圧力の勾配の正負が逆転したときには、その流量を保持するのは当然であり、これに対してイ号物件及びロ号物件では、蒸気流量がある段階の設定流量に移行する際は徐々にその流量を変動させ、所定の流量に達した後にその流量を保持し続けるものであり、両者は表現を異にしてあたかも相違する如く説明されているが、それらの作動が実質的に変わるものではない。

かかる誤認は、第二項発明における流量の連続的な変動の段階と、イ号物件及びロ号物件における蒸気流量を一定に保持する段階という次元の異なるものを対比した結果に基づくものであって、第二項発明とイ号物件及びロ号物件を適正に対比したということができず、かかる点に於いて理由不備がある。

3. 原判決の四十頁四行~四二頁二行に記載の、「6 当審における控訴人の主張にに対する判断」の項では、まず、

「数段階の圧力レベルに次々に達したか否かを検出することは、圧力の勾配を検出することと同等であり、また、イ号物件及びロ号物件と第二項発明における蒸気流量の決め方は、その変更をデジタル的に行うか、アナログ的な変更を含む任意方式で行うかという差異を有しているにすぎない」

とする上告人の主張に対し、

「圧力が上昇していること又は下降していることを検出することと、圧力の現在値を検出することとは同等とはいえないし、蒸気流量の制御の仕方は、前述したとおり本質的な特徴を異にするものというべきである。」

と述べている。

しかしながら、圧力の現在値を微小時間間隔で逐次検出して前後の差をとることが、圧力が上昇していること又は下降していることを検出することであり、圧力の上昇又は下降を検出することは、圧力の現在値を検出することになる。そして、一般的な圧力制御において、検出した圧力の差により圧力勾配を求めることは常套の手段であることから、圧力レベルの検出と圧力勾配の検出とは、測定手段に格別の差異があるものではない。

また、原判決では「蒸気流量の制御の仕方は、前述したとおり、本質的な特徴を異にするもの」と判断されているが、同判決で前述されているところの、判断の根拠とされている理由には、本第一項における前記2項で述べた誤りがあることから、本質的な差異があるという結論にも誤りがある。

4. 原判決四一頁三行~四一頁末行においては、

「前述のとおり、両物件の流量制御方式は、数段階に設定された蒸気流量を当該段階の設定圧力の範囲内において保持する点に本質的な特徴を有するものというべきであり、ある段階から隣の段階に流量が移行する時に弁の開口量の変化が瞬間的に行われるのではなく、徐々に行われるものであるとしても、その点は両物件の流量制御方法の本質的な特徴を構成するものとは解されない。」

と判断している。

しかしながら、この判断の根拠となる理由に誤りがあることは、本第一項における前記2項で述べたとおりであり、誤った理由に基づく右判断にも当然に誤りがある。

第二、 以上に述べたところから明らかなように、流量制御方法について、イ号物件及びロ号物件と第一発明の第二項発明との間には本質的な相違がある、とする原判決の判断の根拠となる理由に誤りがあり、原判決には、実質的な理由が附されず、あるいは判決に影響を及ぼす理由不備の違法がある。

以上に詳論したように、原判決には、民事訴訟法第三九四条に規定する判決に影響を及すこと明らかなる法令の違背、同法第三九五条第一項第六号に規定する理由不備があり、従って、原判決は破棄を免れない。

以上

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